汗をかくというのは、温暖な気候、身体活動、ストレス、恐怖や怒りの感情などで起きる自然な反応ですが、多汗症の人は涼しくても大量に汗をかくこともあれば、突然汗が湧き出ることもある厄介な症状です。
暑い日にダラダラ汗がでるだけなら多汗症じゃないよ!
汗は臭くないんじゃ
汗を止める治療法とメリットデメリット
多汗症とは?
汗をかくことは、体温を調節するための体の方法です。
多汗症の人は、暑い環境にいたり身体を動かしたりしなくても必要以上に汗をかきます。
そういった症状を原発性(腋窩)多汗症といいます。
他の一般的な部位は手と足ですが、顔、頭皮、乳房の間、鼠径部、腰、臀部などでも発症することがあります。
人の身体には数百万個のエクリン腺(汗腺)が全身に分布しており、過剰に活動していることが原因とされています。エクリン腺は、無臭の透明な汗を分泌し、体を冷やす働きをしています。
臭いは皮膚上のバクテリアが汗を分解するときに発生するため、多くの場合、多汗症=ワキガの図式が成り立ちます。
汗腺が過剰に反応すると、体が必要とする以上の汗が分泌されます。
多汗症の種類
多汗症は、通常の必要以上に汗をかくことを特徴とする症状です。多汗症には、原発性と続発性の2つのタイプがあります。
原発性多汗症は、根本的な原因がなく、手のひら、脇の下、足、頭皮、顔などに過剰な発汗が見られます。過剰な発汗は、通常、体の両側に起こり日中に悪化します。また遺伝するとも言われており、症状がある場合にはその家族にも同様の症状がみられる傾向にあります。
続発性多汗症は、感染症、代謝性疾患、内分泌疾患、脊髄損傷、腫瘍性疾患、神経疾患、心血管疾患、呼吸器疾患、ストレスや不安などの基礎疾患が原因で起こります。根本的な問題や原因を対処することが二次性多汗症を効果的に治療する方法とされています。
汗をかきすぎる原因
原発性局所性多汗症と呼ばれる一箇所だけに大量の汗をかく症状は、多くの場合、子供や思春期に始まります。
このタイプの多汗症には医学的な原因はなく、手のひらや足の裏、時には顔にも症状が出ます。
原発性多汗症は、1週間に1回以上、起きている間に起こり体の両側で発生すると言われています。
また遺伝性の要素があり、家族で発症する可能性があるとも言われています。
不安や暑さが引き金になったり、悪化したりすることもありますが、この種の多汗症の人は理由もなく汗をかき始めることが多いようです。
身体的にリスクのある症状ではありませんが、メンタル面で生活の質に影響を与えてしまう症状です。
また、皮膚上のバクテリア増殖を促進するため感染症を引き起こす可能性もあります。
全身性多汗症
全身性多汗症は全身に過剰な汗をかく症状のことで、あまり一般的な症状ではなく発症するとしても人生の後半の場合が多いと言われていて、薬の副作用として起こる場合や、更年期のほてりが引き金になることもあるようです。
妊娠でも発症する場合があるようです。
また、まれに、リンパ腫や結核などの深刻な病気の兆候として現れることもあります。
多汗症治療の種類
多汗症(原発性多汗症)の治療には、外用薬、イオントフォレーシス、内服薬(抗コリン剤)、手術などがあり、侵襲性の低い方法から始めるのが一般的ですが、自費診療を選択する場合には価格やコストパフォーマンスで選択されることもあります。
ミラドライ(miraDry)
- 種類
-
機械照射治療
- 痛み
-
4.5
- ダウンタイム
-
-
- 料金相場
-
300,000円~
腋窩多汗症治療には汗腺を破壊するmiraDry(ミラドライ)が有名です。
汗腺を加熱して破壊します。治療時間は約1時間、治療に耐えられる痛みです。どちらの方法もダウンタイムはありません。
発汗を抑えるだけでなく、治療部位の発毛や臭いも抑える効果があり、ワキガ治療としても人気のある治療法です。
miraDryの治療1回で発汗、臭い、発毛が60~70%減少すると言われていますが、中にはそれ以上の効果を実感する人もいます。反対に汗の量がほとんど変わらないと実感する人もいます。
一度なくなった汗腺は再生しないので、効果は永久的です。
治療部位以外ではもちろん汗をかきます。
ボツリヌストキシン
- 種類
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注射
- 痛み
-
3
- ダウンタイム
-
-
- 料金相場
-
保険適用:26,730円
自費:片側20,000円~50,000円
過剰な発汗は、ボツリヌストキシンで治療することもできます。いわゆる脇ボトックスです。
ボツリヌストキシンは、汗腺を活性化させる神経を一時的に無効にします(筋肉を弛緩させる方法と同様です)。
効果は通常4~9ヶ月ですが、1年程度持続する場合もあります。
ボトックスビスタを使うクリニックが多いような気がしますが、ボトックス以外のボツリヌス製剤でも効果はあります。
医師の診断で重度の原発性腋窩多汗症と診断された場合は健康保険適用できます。(保険診療を行っている美容クリニックか皮膚科で治療する必要があります。)
健康保険を使った場合の費用は2万6730円程度です。(他に検査代、診察代などがかかります)
イオンフォトレーシス
- 種類
-
機器治療
- 痛み
-
0.5
- ダウンタイム
-
-
- 料金相場
-
880円(保険適用)
手足の汗に特に有効だと言われている多汗症治療法です。
一般的には水道水を入れた浅いトレーに15~30分ぐらい手、足を浸し、専用機器を使用して微弱な電流を流す治療です。
効果の評判は悪くない治療法ですが、週に1回以上の治療が必要になる気長な治療で、10回程度はかかるかもしれません。
制汗効果を維持するためには定期的なイオントフォレーシス治療が必要です。
37,000円ぐらいで通販でも買える治療法なので、通院の手間を考えるとそこまで高くないので買った方がいいと思います。
塩化アルミニウム
- 種類
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外用
- 痛み
-
0
- ダウンタイム
-
-
- 料金相場
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1,000円~2,000円前後/100ml
塩化アルミニウム外用療法は保険適用外ですが、皮膚科学会の治療第一選択です。
汗を出す管の細胞に作用して閉塞させることで汗が止まると言われています。
発汗部に効果が出るまで毎日塗布、その後も間隔をあけながら定期的に行う治療法です。
効果が出るまでに2~3週間かかると言われています。
重症度に応じて閉鎖密封療法(ODT)をとることもあるようです。
抗コリン薬(内服・外用)
- 種類
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内服・外用
- 痛み
-
0
- ダウンタイム
-
-
- 料金相場
抗コリン薬は無意識の機能を司る神経系である自律神経の一部に作用し発汗を抑制する作用がありますが、多汗症改善目的では処方してもらえないかもしれません。ただ、保険適用薬です。
抗コリン薬のデメリット
- アセチルコリンの働きを抑えるため、発汗以外の分泌も抑制するデメリットがあります。
- 発汗抑制も局所的ではなく全身に作用するため、体温調節が効かなくなる可能性があるため、熱中症リスクは高まります。
- 唾液、涙、胃酸なども抑制するため、口の渇きやドライアイなど自律神経に影響を与える可能性があります。
多汗症治療を徹底的に比較する
ミラドライ | ボトックス注射 | 手術 | |
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保険適用 | なし | あり | あり |
治療内容 | マイクロ波を照射して、患部にある汗腺を破壊する | ボトックスという薬剤を原因となる部位に注射する | 手術によって患部を切開し、原因となるアポクリン腺を取り除く |
症状 | 中度〜重度 | 軽度 | 中度~重度 |
施術時間 | 60分程度 | 10分程度 | 2~3時間程度 |
持続期間 | 半永久的 | 4~6ヶ月 | 半永久的 |
料金相場(保険適用) | なし | 26,730円 | 50,000円程度(皮弁法) |
料金相場(自費) | 300,000円前後 | 40,000円~ | 100,000円~ |
傷跡の有無 | 残らない | 残らない | 2~4cmほどの傷痕が残る |
ダウンタイムの有無 | 3日程度 | ない | ある |
メリット | ・傷跡ができない・効果が半永久的に持続する | ・施術時間が短い | ・効果が半永久的・皮弁法は保険適用になる |
デメリット | ・費用が高額 | ・効果が持続しない・即時効果はない | ・ダウンタイムがある・傷跡が残る・取り残しの可能性がある |
ボトックスでもミラドライでも治療数日後には大幅な汗の減少効果が得られます。
海外の研究では治療後3ヶ月でどちらの治療法でも約80%の汗の減少が見られたというデータもあるようです。
脇汗治療にミラドライを選択するメリット
ミラドライは、汗を抑えるだけではありません。
汗腺が破壊されているため臭いが発生しなくなります。
デオドラントいらずだね!
ボトックスとミラドライの制汗効果の持続期間を比較
ボトックスによる制汗効果は4~9ヶ月程度と案内されると思います。この効果を維持するためには6~8ヶ月ごとに再治療が必要です。効果消失時期は人によってはもっと早まることもあります。
ミラドライでは治療後に汗腺が再生しないため効果は永久に持続します。
1回目の治療でかなりの減少(60%の範囲)が見られると言われているため1度の治療で辞める人もいますが、さらに効果を高めるために数ヵ月後に2回目の治療を受けるよう案内されるかもしれません。
3回目の治療はあまりすすめられないよ!
ボトックスとミラドライの治療安全性を比較
ミラドライとボトックスははどちらも厚労省の薬事承認を取得している治療法で、さらにボトックスなら症状によっては保険適用も可能です。
つまり経験豊富な医師が治療するクリニックであればどちらの治療を選んでも安全といえます。
技術面でもエネルギーベースの医療機器はすでに多く出回っており、ミラドライもFDAをはじめ各国の承認機構が安全性を確認しています。同様に、ボトックスも美容用途に限らず世界中で広く使われている神経毒です。
ボトックスとミラドライの副作用を比較
ボトックスとミラドライのコスパを比較
よって長期的な視点でみればミラドライの方がコスパが高い多汗症治療といえます。
脇ボトックスを保険適用にする方法
保険適用にする(なる)かどうかは医師が決めることです
保険適用となるワキ汗は、正式には「重度原発性腋窩多汗症」といいます。これは、ワキから腕にかけて汗が滴り落ち、服の両脇が汚れるほど、ワキに過剰な汗をかいてしまうような症状を認めた場合です。
原発性腋窩多汗症の診断・判定方法
原因不明の過剰な局所性発汗が6ヵ月以上持続していることに加え、以下のうち2項目以上あてはまると原発性腋窩多汗症と診断されます。
- 両わきで同じくらい多くの汗をかく
- わきの汗が多いため、日常生活に支障が生じている
- 週に1回以上、わきに多くの汗をかくことがある
- このような症状は25歳より以前に始まった
- 同じような症状をもつ家族や親戚がいる
- 睡眠中は、わき汗がひどくない
さらに、ヨード紙やヨード液を使って脇汗の量を視覚的に判定する定性的測定法や、患者自身の自覚症状から評価する「Hyperhidrosis Disease Severity Scale」など複合判断をもとに重症度を診断します。
- 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
- 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
- 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
- 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
3、4に該当すると重度と判定されます。
ちなみに、皮膚科学会の多汗症治療の第一選択は塩化アルミニウム外用による治療でボトックスは第2選択です。
皮膚科によってはボトックス治療を勧められない可能性があります